『特別展南島』は、南島において自然環境の調査研究や保全活動を行ってきた個人・団体が、その自然の魅力を島民の皆様、観光客の皆様にあらためて伝えたいという思いから企画したパネル展です。南島の陸産貝類、昆虫類、鳥類、水生生物、オアウミガメ、イルカ・クジラ、そして保全活動についてのパネルに加え、動植物の生体や標本、調査道具などの実物展示もあります。
南島は劇的な環境変化にさらされている島です。カタツムリの化石記録は、数万年前の南島が現在の様な海岸植生では無く、湿潤な高木林に被われていた可能性を教えてくれます。私たち人間が小笠原で暮らすようになり、ヤギが放牧されると、その食害によって南島の植生は一時的に崩壊しました。ヤギが駆除された後は遷移が進み、再び島は緑に被われてゆきます。このまま緑が濃くなり、樹林化が進んでいくかもしれません。その過程で、これまで海から南島に栄養をもたらしてきたカツオドリやオナガミズナギドリの繁殖地は縮小、消滅する時代が訪れるかもしれません。もっと短い周期の環境変化もみられます。陰陽池は海水の流入や降雨によってその塩分が短期間で変化し、水生生物は加入と消滅を繰り返しています。渡り鳥は季節性と偶然性によって池にやってきて、南島の生態系に加わります。南島の生きもの達は、様々なスケールで変化する時代の場面場面に適応し、そして失われる事で、南島という世界において大切な役割を果たしている様に思えてきます。
各ブースでは、それぞれの団体が関わってきた生きも達の暮らしぶりをなるべく分かりやすく解説しながら、生々しい最新情報を盛り込む事に気を配りました。中には、小笠原ではこれまでに全くスポットライトの当たることの無かった、少しマニアックな生物も登場します。この企画展が、南島の自然と生態系をイメージするきっかけになりましたら嬉しく思います。ぜひ、小笠原ビジターセンターにいらしてください。
特別展南島 実行委員長 佐々木哲朗
(NPO法人 小笠原自然文化研究所)