「2013年あかぽっぽの集い」開催にあって

 私たちが暮らす小笠原村には、世界でここにしか見られないアカガシラカラスバトが棲んでいます。残念ながら、生き残っているハトは、外から入り込んだ動物達や自然環境の開発などにより100羽ほどまで減っていました。5年前の2008年1月、このハトを絶滅回避するため、父島と母島の島民達と、国内外において野生動物の保全活動に関わる研究者、獣医師、動物園、行政機関など、総勢120名ほどが集まり、三日間かけてハトの保全計画を考えました。自分たちができることで組み立てた保全活動は進んでいき、ハトの一番の脅威となるネコ対策では、捨てられる子猫はいなくなり、また山からは300頭以上のノネコに内地へ引っ越してもらいました。愛称として募集した「あかぽっぽ」の名前は子供達にも広がり、殆どの島民にもハトが棲んでいる島であることが伝わりました。

 そのさなか、昨年の夏に、若いハト達が父島と母島の集落周りで目撃されました。これまで殆ど現れなかった黒いハトが、山で少しずつ増えてきた兆しはありましたが、総計40羽以上もの若いハトが見られたのは初めてでした。「幻のハト」が、我々の暮らす公園や、庭、畑に歩いているのです。昔を知る方、初めて見る方、そして保全活動に関わる我々にも、大変うれしい驚きでした。しかしながら、人間活動の場所にでてきたことで、交通事故とバードストライクで4羽が死んでしまったり、公園でノラネコに襲われる事故も起こりました。
今年の夏のできごとは、増えてきたハトが、山から里に降りてきたように見えましたが、よく観察してみると、若いハト達は海岸林の木の実や花などを食べていました。つまり若いハト達は、夏場に餌になる果実や種子が少ない山から、本来暮らしてきた海岸近くの平地に戻ってきた可能性があります。私たちは、この現象はこれからも続くと考えており、この若いハト達が生き残ることが、あかぽっぽの復活に繋がると思います。
今、小さな海洋島という特異な生態系において進化してきた「あかぽっぽ」が、小笠原の島民と一緒に暮らすという、新たなステージに入ります。今年の「あかぽっぽの日の集い」を、ハトたちと一緒に暮らすこととはどんなことなのか、そうなればどのような幸せ感が得られるのか、達成のためには何を工夫して暮らして行けば良いのかを、他の島嶼部での活動されている方々の話も参考にしながら、皆で考えてみる場にしたいと思います。
「視野は広く、行動は地域にあわせて(Think Globally , Act Locally)」

あかぽっぽネット代表 堀越 和夫