●小笠原諸島のミズナギドリ目鳥類
小笠原諸島には、10種のミズナギドリ目鳥類が生息しています。詳しくみるとアホウドリ科3種、ミズナギドリ科5種、ウミツバメ科2種となっており、このほか、カツオドリ目、ネッタイチョウ目、チドリ目の海鳥が生息する海鳥の楽園です。しかしながら、海鳥の楽園は、常に存続の危機を抱えてきました。特に、希少種・絶滅危惧種が多い小型のミズナギドリやウミツバメの繁殖地において、外来哺乳類による大きな影響が生じており、保全対策が必須の課題となっています。
●i-Bo(小笠原自然文化研究所)のとりくみ
i-Bo(小笠原自然文化研究所)とアホウドリ類の出会いは2000年。聟島列島に1羽のアホウドリが飛来したことがはじまりでした。それは、羽毛採取による乱獲で絶滅したと言われてから、実に70年ぶりのことでした。4年間の東京都による委託調査を経て、コアホウドリの独自モニタリングを開始。この他、クロアシアホウドリの新規定着地や、人工繁殖地以外の島でのアホウドリのモニタリングを東京都と共同で継続しています。
また、ミズナギドリ類との出会いも2000年でした父島列島の南島における植生回復調査(東京都)で、海鳥類のモニタリングを開始したのがはじまりです。その後、聟島列島においてノヤギが排除された後の海鳥類のモニタリングも独自に開始(後に東京都調査に編入)、両モニタリングは20年以上継続し、海鳥たちの変化を詳細に追跡しています。
さらに、セグロミズナギドリや、オガサワラヒメミズナギドリの独自調査と保全対策も実施、継続しています。アホウドリが70年ぶりに飛来した2000年は、i-Bo(小笠原自然文化研究所)がスタートした年でもありました。
この20年、小笠原諸島の海鳥自身にも、彼らの生息環境にも大きな変化がありました。それ以前からの長期に渡る多くの人々の努力により、奇跡的な生息数の回復をみせ、小笠原にも繁殖地が回復しつつあるアホウドリは、象徴的な存在でしょう。今、非常に厳しい状況にある小型のミズナギドリたちも、20年後、そして、50年後、100年後、先祖と同じように彼らが自分達の海と空を取り戻しているよう、彼らの生命力と、人の意思と努力と工夫が継続されるよう願っています。