小笠原諸島の兄島、父島、母島の河川淡水域から、新種のヨコエビ類が2種発見されました。この2新種は、広島大学の富川光博士と小笠原自然文化研究所の共同研究により、ドイツの国際動物学雑誌(Zoologischer Anzeiger)に論文として報告されました。https://doi.org/10.1016/j.jcz.2021.12.005
新種は、オガサワラメリタヨコエビ(Melita ogasawaraensis)、ヌノムラメリタヨコエビ(Melita nunomurai)と命名しました。オガサワラ(種小名 ogasawaraensis)は産地の小笠原諸島を表しています。ヌノムラ(種小名 nunomurai)は、甲殻類分類学者の布村昇博士にちなんでいます。布村博士はオガサワラフナムシやオガサワラコツブムシなど、小笠原諸島の固有甲殻類を数多く新種記載されています。
メリタヨコエビの仲間は世界から約60種報告されていますが、多くは海産種または汽水種で、淡水種はこれまで6種しか知られていませんでした。今回の発見は、国内から初めての淡水産メリタヨコエビ類の記録となりました。論文では、同時に琉球諸島からも淡水生の2新種(ミヤコメリタヨコエビ、オキナワメリタヨコエビ)を報告しています。
遺伝子の解析から、小笠原産2新種はそれぞれ独立して小笠原諸島の淡水域に侵入したと考えられます。研究グループでは、幅広い塩分耐性を持つ汽水種が、過去に海流によって小笠原諸島にたどり着いた後、淡水種へと進化したのではないかと考えています。
小笠原諸島の自然環境は、主に外来種問題によって危機的な状況が次々と発覚し、日々懸命な保全活動が行われています。一方で、未だにこのような新発見があり、世界自然遺産にも登録された同諸島の生態系の奥深さを表しています。