雑誌『OZ magazine』へ掲載
今月12日発売の女性誌OZ magazine 7月号は『島の旅へ』という特集が組まれ、日本各地の島がいろいろな視点で紹介されています。このなかで小笠原諸島は『世界遺産の島と飼い主のいない猫』というタイトルでノネコの捕獲・引っ越し作戦が取りあげられ、事業のはじまりから最近の成果までが簡潔に紹介されています。88ページに“ねこ待合所”や“引っ越しネコのタイル絵”新ゆりがおか動物病院の“マイケル君”の写真も載っていますので、書店で探してみてください。
今月12日発売の女性誌OZ magazine 7月号は『島の旅へ』という特集が組まれ、日本各地の島がいろいろな視点で紹介されています。このなかで小笠原諸島は『世界遺産の島と飼い主のいない猫』というタイトルでノネコの捕獲・引っ越し作戦が取りあげられ、事業のはじまりから最近の成果までが簡潔に紹介されています。88ページに“ねこ待合所”や“引っ越しネコのタイル絵”新ゆりがおか動物病院の“マイケル君”の写真も載っていますので、書店で探してみてください。
上;山中のネコ捕獲カゴ
下;ねこまちに到着したネコ
10:59携帯電話が鳴りました。父島ネコ捕獲隊員からの電話で「やりましたよ!」「桑の木山で…ちょっと小さめですが、尾の長い黒ネコです…」
父島では2010年から捕獲範囲を山域全体に拡大し、現在ネコの生息状況は低密度の状態になっています。捕獲ステージは終盤にさしかかりましたが、山中に設置したセンサーカメラには時々ネコが撮影され、個体識別できているネコを含めて、なかなか捕獲できない状態が続いています。昨年12月に2頭捕獲、その後集落に近い三日月山で3月に1頭…、全域捕獲初期の頃に比べると捕獲率はかなり低く、捕獲隊員のモチベーションの維持も難しい時期にきています。そんななかのネコ捕獲は格別の達成感があるようで、弾んだ声で連絡が入りました。捕獲されたネコは2.12kgのメスネコで、18日父島を出港するおがさわら丸で東京へ搬送する予定です。
これまで中川動物病院には、多くの小笠原ネコを引き受けていただいていますが、そのほとんどが新しい飼い主さんのもとで暮らしているようです。今回病院を訪れると、昨年9月に引き受けていただいたネコ『チチ』に会うことができました。高齢であったことから病院ネコとして暮らしており、猫舎周辺を生活空間としてスタッフの愛情をいっぱい受け、おねだりスリスリも得意な様子でひとまわり大きくなって、癒しの存在となっていました。2日夜には、一緒に小笠原ネコの出産を見守りました。
病院にやってきた小笠原ネコは、人通りの多い受付横のスペースに置かれ、スタッフや病院にやってきた飼い主様に声をかけてもらいながら、少しずつ人に馴れていくようです。忙しくても、少し空いた時間を利用して声をかけ、状況をみながら積極的に触れるよう心がけて接しているようです。
研修上京中に新宿動物病院の看護師さんからもメールが入っていました。2007年12月に受け入れていただいたネコが亡くなったことを伝えるもので、「何度か体調を崩して死にかけたこともありましたが、その度に奇跡の復活を遂げていたので、今度も頑張れるかと思ったのですが…。独特の愛嬌あるキャラクターで癒し系だったので寂しくなります。」と記されていました。
集中治療室に収容してもらった子ネコ、感染症があって病院ネコとして5年以上の歳月をスタッフとともに過ごし、何度も命拾いしたネコ…、小笠原のノネコも同じ命として献身的にお世話してくださる多くの病院スタッフのみなさまに深く深く感謝いたします。
4月26日、西東京市の中川動物病院に体調の優れない親子ネコをお願いするために訪ねた機会を利用して、そのまま動物病院での研修もさせていただきました。見る聞く体験を主とした研修となりましたが、診療方針、飼い主様との関わり、地域との関係、超音波など機器を用いた検査、手術、薬剤処方、入院中のペットのお世話、犬の散歩やトリミング…など、また深夜小笠原ネコの出産にも立ち会うことができ、はじめての動物病院での経験は大変貴重なものとなりました。内地でのペットとの向き合い方を体験したことで視野が広がり、動物医療が不十分な小笠原におけるペットと人との関係を考えるうえでのよい機会となりました。
ピリッとした医療現場独特の緊張感漂う空気の中にもペットの愛らしさとスタッフの愛情が溢れていて、ときに病院ネコたちに癒されながら働く時間は新鮮でした。春の大変忙しい時期にも関わらず、丁寧にご指導いただいたスタッフのみなさまに感謝しています。
上;おがさわら丸での搬送
下;集中治療室に収容された子ネコ
4月19日出港日の朝、東京搬送予定のネコが1匹の茶トラネコを出産していました。ねこまちでの出産は今回で3回目でしたが、胎盤がついたままで母ネコは子ネコに寄り添うことなく、育児放棄した状態でした。すぐに東京都獣医師会の先生に電話連絡し、人工哺乳で対応することにしましたが、早産だった可能性が高く、体重は64gととても小さく、数日はミルクの飲みも悪くて体重増加がみられませんでした。事業本来の目的を考えると…と脳裏を掠めますが、目の前の小さな子ネコは箱の中を動き回り、お腹が空いたと鳴き、生命力の強さを感じさせました。島での人工哺乳に限界を感じ、対応を相談すると「東京まで搬送できれば引き受けますよ」と西東京市の中川動物病院の先生が言ってくださいました。小さな命をなんとか繋ぎたい…そんな思いを胸に25日14:00哺乳用具とペットヒーターを持ち込み、産後体調を崩した母ネコとともにおがさわら丸に乗船しました。ペットルームに泊まりこみ、2時間おきに哺乳を行いましたが、長い長い25.5時間でした…。竹芝桟橋から動物病院までは、もっともっと時間が長く感じられました。
子ネコは集中治療室に収容され、献身的な医療・看護が続けられています。日々の体重増加はわずかで、まだまだ安心できない状態のようですが、元気に育ってくれることを小笠原から祈っています…。