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動きはとてもゆっくり、
歯は驚くほど摩耗していた20070430

4月末の雨の父島、いつも調査でお世話になっている農家の方から電話がありました。「オオコウモリが木から落ちた!、来てくれ!」 現場ではクワノキの根もとで、グッタリと翼を開いてうつぶせに頭を投げているオオコウモリが震えていました。体温も下がっており、すぐに保護。ケアが始まりました。が、どうも、いつもと様子が違う。保護コウモリが少しだけ落ち着きを取り戻した後に、よくよく観察すると、これは大変なオバアオオコウモリであることがわかりました(歯は摩耗、皮膜はシワシワ、毛も薄く、四肢も弱い)。栄養と保温、補液などで、徐々に復活したオバァオオコウモリは、ヨイヨイではありましたが、2週間以上にわたり穏やかな小康状態を保った後、大往生?!となりました。10年以上、オガサワラオオコウモリを見てきてましたが、はじめてのオオバアサンでした。
(天然記念物・RDB種ĄA類であるオガサワラオオコウモリの保護は関係行政機関の現任を得て、当研究所に依頼されて実施しているものです

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衝突だけで逝ってしまうシロハラも多い。

つい先日、シロハラミズナギドリが持ちこまれました。ネコに狙われているところを助けらたのですが、額に激しくぶつかった痕が見られます。まずは、人工構造物に接触し、墜落。その後、動けないでいるところをネコに見つかり・・・これは、父島・母島の集落地における典型的なパターンのひとつです。通りがかりの人に保護されたこのシロハラは幸運でした。数日を要しましたが、バランスも良く羽ばたいて海に帰りました。

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箱からだすと、ジッと海を見たかと思うと、
向かい風を受けて飛んでいきました。

今回のお客さん(不時着鳥)はシロハラミズナギドリでした。幸い外傷もなく、無事に宮之浜から放鳥しました。前回、クロウミツバメをご紹介しましたが。実はこのシロハラミズナギドリも謎だらけです。繁殖情報は南北硫黄島を除くと、小笠原群島では唯一北之島で繁殖情報がありますが、ここ数年、同島の調査では確認できていましせん。毎年、父島・母島で不時着鳥が保護されるピークが2月〜5月、遅くとも、せいぜい8月頃まで。ここいらへんに鍵がありそうです。

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翼の白斑が目印

「今年は小笠原も暖冬だ。」そんな声が聞こえていた2月は半ばすぎ、珍しいVIPが保護されました。クロウミツバメです。翼を伸ばした際に、羽軸の基部が白く見える(白斑とかスラッシュなどと言われる)ことが特徴です。海鳥としては大変に珍しい小笠原固有種です。これまでの繁殖地は南北硫黄島のみです。1990年代末に行われた北硫黄島における調査(山階鳥類研究所が約1ヶ月滞在)では、繁殖地が見つかりませんでした。この時に、外来哺乳類であるネズミ類が確認されたことから、繁殖地への影響が懸念されています。一方、南硫黄島では25年前の学術探検隊の入山以来、上陸がないため、現在の繁殖状況は不明です。

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翼を閉じるとオーストンと見分けは付かない

小笠原群島界隈まで北上すると、よく似たオーストンウミツバメが繁殖しています。夏ともなると、独特の軽やかな海上飛翔を見ることができます。翼を開かない状態では、クロウミツバメとオーストンウミツバメとの判別は難しく、やはり飛翔中の白斑が唯一の目印になります。陸鳥でいうならば、ハハジマメグロと同じ、小笠原固有の海鳥ながら、その生態や現在の繁殖地などはまったく謎に包まれており、一刻もはやい本格的な調査が必要な種類です。保護鳥は無事に放鳥されました。