レスキュー

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すいすいと羽ばたきながら前に進むクロアシザシ
の飛び方は、オナガの集団に交じると際だつ。       
      (撮影は昨シーズン)

しばしのお休みでした。いよいよGWに突入。久々の大型連休もあってか、今日のおが丸は900人以上を乗っけてやってきました。残念ながら天候はいまいちで、なにやら梅雨入りの気配さえしてきましたが、お休みしていたこの1ヶ月に、オナガミズナギドリの飛来(繁殖のための)が本格化し、冬のわたり鳥の姿が、だいぶ減りました。最近、私は母島行きが多いのですが、オナガの大集団のほかに、ほぼ毎回と言っていいほど、少数ながらクロアシアホウドリの優雅なグライダー飛行を見ることができます(もうそろそろお終いですが)。また、一昨日には、オナガミズナギドリにまじり、クロアジサシの群れも見ることが出来ました。いよいよ夏の使者到来です。さらに、巣立ちの時期と関係が深いと考えられるこの時期特有の希少種、シロハラミズナギドリ、クロウミツバメ、オーストンウミツバメの保護も出ています。特に、シロハラは父島、母島で何羽も相次いでおり(電灯への激突、電線衝突による激しい裂傷など)毎年ことながら、なんとかしてやりたいと胸が痛みます。せっかく何ヶ月もかかってようやく巣立った島っこ(個体)であり、小笠原に子育てに来た親鳥なのですから。

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この時期、誤保護が多いイソヒヨドリのヒナ。

毎年GWと重なるこの時期は、イソヒヨドリやメジロなどのヒナが誤って保護される事例が発生します。巣立ちしたのに、まだまだヨチヨチ歩きのヒナが遠出をはじめ、気が気でない親鳥が、後をおってついてまわる姿に遭遇するのです。地面を歩くまだよく飛べないヒナに出くわすと、ついつい拾い上げる人も多いようなのです。でも、です。そもそもこの時期のヒナは日に何度も何度も親鳥に餌をもらわないと生きていけません。ですので、そのヒナが生きて歩きまわっているってことは、いるのです。かならず、近くに親鳥が。もし姿が見えなければ、自分(人間)が邪魔して、親鳥が近づけないのです。うっかり、持ち帰ったりすると、親鳥とヒナとをはぐれさせることになってしまい、このことからヒナの誤保護は「誘拐」とも言われます。どうしても、気になったら、ヒナをすばやく一番近くの木の枝の上に、そっと持ち上げ、静かにすばやくその場を立ち去る、これが一番です。
写真:特に、こんな鳥が地面をピョンピョンしているのを見たことがない観光客は、善意で連れてきてしまうことが多い。一度、親鳥とはぐれたヒナを無事に育て上げるのは大変難しい(撮影は昨シーズン)。

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片翼がとれかかったシロハラミズナギドリ

3月6日、父島の集落地でネコに襲われているシロハラミズナギドリが保護され、届けられましたが、すで片翼の付け根が粉砕され脱落寸前で、傷も深く、結局、死亡しました。これまで、北之島や硫黄列島からしか、繁殖記録のない希少な海鳥です。この時期には、繁殖のために成鳥が飛来します。このコーナーでも繰り返しご紹介してきましたが、一度陸地に降りたなら、まったく動きの鈍いミズナギドリやウミツベメたちは、とくに格好の餌食になってしまいます。

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保護されたクロウミツバメ(小笠原固有種)

2月21日父島西町、夜の飲食店街で落下してきたクロウミツバメが保護されました。最後は人にぶつかったとかで、人工光に惑わされ、あちこち激突した後に、フラフラ落下したようです。一晩安静にすると、十分に落ちついており、激突による身体内部の腫れも心配なさそうなので、さっそく翌日放鳥しました。いつもお世話になっている、調査船興洋(小笠原水産センター)から、この数日間、クロウミツバメとシロハラミズナギドリが父島列島の沖合で飛んでいるという情報を頂いて、いよいよ、今シーズンも始まるなぁ、と思っていた矢先のことでした。この両種は希少種で、とくにクロウミツバメに至っては、あまりにも知られていませんが、陸鳥メグロとならぶ小笠原固有種です(海鳥では唯一の固有種 RDB:DD)。火山列島で繁殖し、索餌の関係か、春先のこの時期だけ父島・母島列島沖合に出没します。しかし、5月をすぎた頃からは、母島より南へ行かないと、ほとんど見ることが出来なくなります。今なら、おが丸、はは丸から見ることが出来るかもしれません!

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元気に飛び立つオナガミズナギドリ

11月20日頃より始まった、今年のオナガミズナギドリの巣立ちも、そろそろお終いのようです。島の方々のご協力により、父島では約30羽の巣立ち鳥が保護され、3羽を除いて無事に野生復帰しました。死亡の内訳は、人工建造物衝突2羽、交通事故1羽でした。昨年度よりはじめた夜間パトロールと、夜のうちに不時着鳥を保護してくれる人が増えたために、驚くほど交通事故が減りました。例年この時期には、清瀬交差点、生協前、福祉センター&三角広場付近、奥村グランドトイレ前などの路上で、哀れな交通事故死体が見られていたのですが、今年、路上で潰れているものは見ませんでした。また、早期回収はネコ害も減らしました。3羽は、まさにネコに狙われているところを保護されました。父島全体では、恐らくi-Boで把握している2〜3倍以上の不時着があったものと予想されますが、少なくとも集落地域におけるオナガミズナギドリ巣立ち鳥の人為的事故を減らせたことは、大きな成果です。なお、この期間、父島の国立天文台VERA小笠原観測局のパラボラアンテナ照明及び、小笠原ビジターセンターの外灯において、光による海鳥の誘引を防ぐために、ライトダウン等のご協力を頂きました。大感謝です。どうもありがとうございました。地味ながら、野生動物との共存とは、こんな小さな生活上の工夫や取り組みの積み重ねが必要なのではないか、と思います。
ご協力頂いた島のみなさま、まことにありがとうございました。

●回収協力:KOTARO&CHIKAKO、PAPAYA、小笠原海洋センター、小笠原水産センター、Solmar、WEST、小笠原父島漁協、さなえちゃん、YATSUKAさん、YUKINO&NORIさん、太田さん、K.WADA、キャベツビーチ、中野さん、ウォーキング中ののどなたか、横山さん、はるみさん、MOCHIKENさん、城本さん、千喜良さん、玉田さん、紀さん、ほか沢山の方々、
●チラシ掲示協力:たらふく、ふくちゃん、マルヒ、小祝商店、RAO、KAIZIN、Solmar、悠々、海遊、パパイアマート、PAPA’S、小笠原島農協、沖山酒店、ビーチコマ、小笠原島生協、小笠原父島漁協、父島分遣隊、小笠原小&中学校、小笠原警察、小笠原観光協会、OWA、東京電力、BIO、小笠原水産センター、NACS-J-O、小笠原野生生物研究会、小笠原支庁産業課