ガーコ

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「死んだ!?」

死んだ! ガーコがやってきてから、何度そう思った、というより叫んだことか。彼らはほんとうにびっくりするくらい脱力して眠ることがあります。繁殖地の調査でも、ごくまれに(こちらが風下の崖上にいるときなど)、人にまったく気付かずに、翼も首も足もみな投げ出して眠りこけるカツオドリを見ることがあります。でも、たいてい鳥が先に気づきますから、この「あられもない姿」を見ることは、まれです。この写真は、首を後方にたたみ、羽の中に器用に突っ込んだ「いわゆる鳥の眠るポーズ」で寝始めたはずが・・・・次第に翼が開き、首も垂れ始めたところです。写真にはとれませんが、やがてこのまま、首は地面に横たえてクチバシは半開き、両翼とも完全に投げ出されて、もうどう見ても死んでいる! としか思えない状態にまで至ります。人が知っている動物の姿は、ほんとうに「少し」だけなのですね。

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風切り羽のみが黒かった「ガーコ」

いよいよ本格的に羽毛(白い綿毛)が抜けはじめ、成鳥へのカウントダウンが始まりました。下から生え揃ってきている成鳥羽のせいでしょう、白い羽毛は浮きぎみで、一日中盛んに羽つくろい というより 毛抜きに夢中です。クチバシの先端には白い毛玉がついていることもしばしばで、なんとも間抜けな風情ですが、これこそがいよいよ大人(成鳥)への階段を上り初めたという証拠でもあります。食欲は旺盛でムロアジやミズン(イワシ)を何本もたいらげます。
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首を伸ばしてお休み中

生き物の形(外部形態)は、しばしばその生物の生活や進化の過程を教えてくれます。海鳥にもいろいろな種類がいて、クチバシの形だけを見てもさまざまです。カツオドリ類は、長くとがった特徴的なクチバシを持っています。小笠原の海では、翼を後方に折りたたみ、まるでひとつの矢のようになって、クチバシから海へダイビングするカツオドリを見かけます。空を飛びながら、透き通った海面下に魚(トビウオ、イワシ、イカなど)を見つけると、ものすごいスピードで垂直にに急降下して一気に捕まえるのです。長く尖ったクチバシは、この水中突入にとても適しています。
写真のような不思議な動作は日常的に見られます。食事後は、まるで飲み込んだ魚を横たえるかのように、朝夕にはまるでストレッチのように、クチバシを預けて首を伸ばします。海の生活に適した海鳥の「姿勢」にも、まだまだ謎が残されているかもしれません。
繁殖地からの落下の時のものか、ガーコのクチバシは深い傷だらけです。

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黒褐色部分が目立つようになった

運ばれてきたときは「まっ白」というイメージだったガーコ(カツオドリ)ですが、だんだんと黒褐色の部分が増えてきました。これは白い産毛の下に、徐々に成鳥羽がそろい始めている証拠です。背中や、翼角、それに嘴の届く下腹などが、特に「ゴマシオ模様」が目立ちます。額の生え際にもきれいな黒い縁取りができました。産毛か、成鳥羽の出始めがかゆいのでしょうか。さかんに、嘴で浮きぎみの産毛を引き抜くようにする仕草がよく見られるようになりました。小笠原の島々でカツオドリの巣立ちが始まるのは、はやいものでは9月末くらいからです。

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保護されたガーコ その後

「カツオドリ」が、この鳥の和名です。もともと小笠原での呼び名は「オサドリ」で、鳴き声から「ガーコ」という愛称もあります。さて、その「ガーコ」のその後。今が旬のムロアジをたべはじめてから、すっかり見違えるほど元気になった「ガーコ」。保護場所にもなれ、落ち着いて羽繕い(産毛のお手入れ?)をし、また、尾を上げ、頭を下げて低い姿勢をとったかと思うと、ピューッと超強力水鉄砲のごときフンを飛ばしています。ヒナらしく、あたりへの好奇心も旺盛で、盛んに草や木の枝などを、引っ張ったり、持ち上げたりと遊びながら、次第に、クチバシの使い方が上手になっていくようです。