2010年

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小さな身体をトリッキーに傾けて滑空します。

6月下旬から7月頭にかけて、北硫黄島に調査で行ってきました。希少な野生動物の現況を把握するために委託を受けました。今年は梅雨開けが早く、海岸部はすでにチンチンに焼けていましたが、北方を通過している遠い低気圧のおかげが、終始、比較的涼しい風に恵まれて、予想よりも快適に過ごすことが出来ました。調査でも目的を果たす事ができ、なにより隊員全員が無事で帰る事が出来ました。帰路すれ違ったクロウミツバメをご紹介します。このクロウミツバメ、世界で小笠原(南硫黄島)でしか繁殖が確認されていない、幻とも言われる海鳥です。

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写真は6月4日保護されたもの。無事に戻っていきました。

脳震盪のメジロです。巣立ちのメジロが あちこち頼りなく行動圏を拡げ始めるこの季節。窓やら建物やら、車やら、人工物にぶつかってひっくりかえったメジロの若鳥が多くみうけられる季節です。たいがいは、一時的な脳震盪で、少し時間をかけて休ませると、次第に回復して、もとの群れに戻っていきます。

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追跡調査は1週間程度で終了。チラホラ目撃もあり、自活は
できているはず。あとは運と根性でしょうか。がんばれ!

母島にて、無事オガサワラノスリが放鳥されました。3月上旬の保護から、丸3ヶ月以上。小ケージ、飼養施設、仮設フライングケージの3段階をへて、左翼骨折とその後の、左右のアンバランスを克服。無事に母島へ帰りました。仮設ケージ内ではクマネズミの捕食も可能になっていましたが、施設的な限界で垂直方向の飛翔が、やや不十分なままの放鳥となりました。スタッフの献身とともに、父・母・島外多くの方々に大変にお世話になりました。/飼養&放鳥&追跡:東京都鳥獣保護員(父&母)、IBOスタッフ/主治医:天野洋祐先生/施設:小笠原支庁産業課、IBO12Thanks: 母島観光協会、母島小中学校、千葉夕佳さん、しまちゃん、トミヤンクン、すだっち、かねちゃん、ぶんちゃん、ただちさん、母島畜産指導所、ほか大勢の島の人達 /フライトアドバイス:齋藤慶輔先生

Special Thanks: 亜熱帯農業センター

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アナドリはとてもおとなしい。巣穴利用形態は島によりさまざま

小笠原は連日、濃霧です。梅雨明けの気配、照りつける太陽に、降りすぎの雨がしみ込んだ山肌から、温度の低めな海面から、絶え間なく霧が生まれ続けているかんじです。そんな中、南島へ今年で10年目となる海鳥の調査にむかいました。例年通り、すでにアナドリが飛来し、抱卵を開始していました。真夏に子育てをする小さな海鳥です。数年前に南島と並ぶ、アナドリ代表的な繁殖地であった東島で、クマネズミによる壊滅的な被害が発見されました(当研究所のセンサスによる)。南島にも、クマネズミがいるために、今年はとくに注意深い調査が必要になっています。

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ミズナギドリ類の多くのは、1年に1羽しか子供を育てません。
そのかわり、10年、20年と長生きをして、世代をつなぎます。

前日に続き保護がありました。今度は、シロハラミズナギドリ。しかし、残念なことに即死状態でした。夜間活発に活動し、光に集まる習性を持つミズナギドリ類にとって「光」は魔物にもなりえます。大海原に浮かぶ小笠原。父島や母島の灯りは、夜の海にどう映るのでしょうか。共生 この言葉を実現していくためには、人間の創意工夫が必要だ、つくづくそう思います。


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