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父島西町の研究所の周りにもアカガシラカラスバトが出現する季節となりました。自然の樹木の種子(落ちて埋まったものもの含めて)が豊富な秋から冬をすぎて、春から夏は餌の少ない山から低標高の畑や集落、海岸に降りてきます。ジュズサンゴ、ウスカワマイマイ、ミミズ、島唐辛子などを求めて徘徊する季節になります、特に、経験の少ない若鳥(クロポッポ)は、群れるように、父島、母島の集落や畑、そして道路に出てきます。実はこの季節は、若鳥にとって鬼門、交通事故などの頻発する時期なのです。毎年10羽以上の若鳥がこの季節に命を落としてしまいます。特に早朝や夕方は危険です。ゆっくり運転で、少しでも彼らの命を救いたいものです。

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今日は、長いです!
先日、バナナの繊維に絡まったオオコウモリの子供が保護されました。
絡まり事故は、想像を越えて深刻です。腕が太いロープで何時間も縛り上げられる事態を想像してもらえると、深刻、も伝わるかも。ただし、今日の話は、バナナの茎まで喰った、というほうです。葉っぱを食い尽くし、茎まで囓って出液をすすっているうちに、自分たちで囓りちらしたバナナの強い繊維にこんがらがってしまったのです。こんな絡まり珍事は、あの2019年の記録的台風19号の翌夏以来でした。

実は、今、ここ数年で例のない、極端な餌不足となっています。つまずきは、2022年4月の台風。いろいろな花が叩かれ、その後の結実や植物季節に波及。つぎは、8月、突然直角に進路を変えて西進した台風。トドメは11月−12月に連発した豪雨とど晴天のくりかえし。もともと、真夏(7−8月)と真冬(1−2月)は、天然餌が不足して、農作物への食害が問題になる時期ですが、今冬は非常に深刻な餌欠乏へ。例年なら餌不足時期にも、ダラダラどこかで結実してつないでくれるはずのガジュマル、シマグワ※が、12月の頭までに一斉に大結実。で一気に落果してしまいました。アカギの結実の終わりとも同調してしまいました。冬季に結実する在来種ものきなみ凶作で、それ以降は完全に餌切れ状態に。現在、みつかる天然餌は、ヒメフトモモ(実)で、これももうすぐ無くなります。

ボクらの観察からは、これらの影響がオオコウモリだけでなく、アカガシラカラスバト、メグロ、メジロ、オガサワラヒヨドリなどに及んでいる可能性が高いです。当然、ネズミ類との餌のとりあいも激化するはずで、こうなると、餌のある場所に動物が異常な集中と執着をみせやすくなり、想定内外、さまざまな事態が連鎖的に発生しやすくなります。特に、この餌欠乏のタイミングで、開花をむかえるレモンは厳しい状況です。

これまでの経験から、3月末のビロウが開花する頃には一度リセットがかかり、落ち着きを取り戻すはず。そう信じていますが、まだまだ2月中旬。あと、40日以上は、人と作物にも、動物にも厳しい試練となりそうです。緊急のご連絡は、アイボ、またはアイボレスキューダイヤルへ。
※ 両方外来種ですが、島の生き物も大いに助けらている側面もあるのです。

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一昨晩、保護がありました。小ぶりの身体にごま塩頭のシロハラミズナギドリ。英名は Bonin Petrel。彼らの不時着がはじまると、小笠原の春到来と、暦がひとつ進んだことを実感します。現在、繁殖が確認されているのは南硫黄島。北之島でも散発的な確認がありますが、安定的な繁殖は確認されていません。森林性で小型なので、ネズミの侵入した島では繁殖が困難です。毎年末11月〜12月に巣立つオナガミズナギドリに比べると圧倒的に、不時着も少数ですが、2月から8月くらいまで、時々保護個体が出ます。とくに天気が悪く、島灯りが、低い雲底を照らしている夜は要注意です。米軍時代までは、ウィロウィロというかわいい呼び名もあったようです(白黒タイプの小型ミズナギドリの呼び名として)。真冬から春にかけての不時着は、やや少ないながら、シロハラミズナギドリ、オガサワラヒメミズナギドリなど、希少なメンバーが交じります。危なそうな夜は、ぜひ気にしてみてください。見つけたらアイボレスキューダイヤルまで。

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11月から続いたオナガミズナギドリ巣立ち鳥の回収では、大変お世話になりました。10月の保護2羽も入れて、12月上旬までに合計30羽が保護されました。保護後の死亡は1羽。怪我を追っている個体4羽で、このうちの2羽は回復し海に戻りました。集計すると父島の2022巣立ちシーズンは、保護回収30羽、野生復帰27羽(12月13日時点)となりました。発見、回収、ライトダウン、広報等にご協力いただいたみなさま、心より御礼申し上げます。
本来、巣立ち鳥が、至近の島々に降り立つことは、なんでもないこと、若者の旅立ちのドタバタの一コマにすぎません。しかし、有人島に降りてしまうと、多くの危険が待っており、命を落とすことも少なくありません。
海鳥の中でも、アホウドリ類やミズナギドリ類は長寿です。とく巣立って最初の1年を乗り切れば、その後の生残率はグッと高くなる、そんなデータもあります。今回、巣立ち時期の危機を乗り越えたミズナギドリたちが、この1年をのりきって、また故郷に戻ってくることをねがいましょう!! ご協力の島のみなさま、本当にありがとうございました!! 感謝!!!